キャリアアドバイザーと求職者が対話に集中できる環境を、エンゲージメントを生み出す新しい仕組み
株式会社アスカ
- 業界 :
- 人材
- 利用チャネル :
- AI活用 LINE

「人が輝く」ために、AIを戦力に。 テクノロジーを活用した顧客接点をつくり、休眠求職者の掘り起こしと面談促進を実現
保育業界では高い離職率や、有効求人倍率約3倍と構造的な人材不足が続いています。近年は保育士の職場に対するニーズにも変化があり、雇用形態や職場環境を適切にサポートすることが求められています。
保育人材サービスに特化し、全国21支店・約300名のコーディネーター体制を強みとするアスカ様は、この市場課題に対し「キャリアアドバイザーを面談・対話に集中してもらう」環境を整えるため、「人が成果を挙げるためにAIなどのテクノロジーを使う」という戦略を強化しています。AI架電やLINEの連携により、キャリアアドバイザーの定常的な業務をAIに任せ、求職者の掘り起こし工数を削減し、面接移行率向上という具体的な成果へと繋がっています。
専務取締役 浅見 慶敬様
保育人材事業を支える300名のキャリアドバイザー

保育人材領域に特化し、派遣・紹介・ダイレクトリクルーティング事業を軸に全国21支店約300名のコーディネーター体制を強みとして総合人材事業を展開しています。
保育業界では、慢性的な人手不足に悩まされています。
近年、待機児童の問題は改善されてきていますが、 有効求人倍率は平均3倍、離職率も高い状況が続いています。
また、外国語教育の強化を進める保育園やインターナショナルスクールの教育現場も10年前と比較すると増加しているため、外国人人材の採用ニーズが近年上がってきています。
また、求職者である保育士側が望む働き方・職場のニーズも変化しています。ICT(情報通信技術)の導入が進み、子どもの記録管理や日誌作成、保護者との連絡共有などがデジタル化している園も増えています。デジタル主体の現場に一度慣れてしまうと「手書きの作業に戻れない」という声や、「雑務や持ち帰りをなくしたい」など子どもに向き合う仕事に専念したいという環境を求める傾向が強まっています。
保育人材業界で「人対人」の価値を追求

人材事業において、求職者の深い悩みや転職背景に応じた寄り添った対応がキャリアアドバイザーの存在価値です。
求職者へのコミュニケーションでは、単なる求人紹介ではなく、その人に合った働き方や人間関係の良い職場を見極め、AIやシステムでは代替できない細やかなヒアリングと共感が不可欠です。
対面でのコミュニケーションに時間をかけるためには、デジタルツールで非効率な作業を削減し、捻出された時間とリソースを対話に充てることで、価値が発揮できると考えます。
Mico Voice AIやLINEを活用したデジタルコミュニケーションの強化に踏み切った背景には、こうした市場の課題と求職者のニーズ変化がありました。
「つながらない架電」から脱却、AIが掘り起こし業務を成果創出のチャンスへ
キャリアアドバイザーの工数を最も奪っていた「掘り起こし(休眠顧客への架電)」業務にAI架電を導入しました。
掘り起こし業務は、「繋がるかわからないところに人がかけていた」最も非効率な領域です。担当者が100件かけて1件繋がるか、話せるかどうかという世界であり、人材領域ではAI架電を使うしかないという判断でした。
まず、AIが人手でかけていた分のコール数を代替し、さらに架電量自体も増加しました。
これにより、人手だけでは架電しきれていなかった休眠データベース全体にアプローチが可能となりました。特に、登録日が古い、例えば9年前などの求職者層への架電は心理的な抵抗が生じますが、AIは抵抗なく一律でアプローチするため、人手では拾い切れなかった層を掘り起こすことに成功しています。

AI架電導入初月には、通電時に「仕事を探している」と回答いただいた方の約半数はキャリアアドバイザーに電話を転送し、接点を持つことができています。
この結果により応募数も増加し、応募単価も想定の10分の1以下に収まっています。
架電数を増加させていきながら、適正化を図っています。通電後のアンケートでも安定的な回答率を得ており、状況把握に役立っています。
実際に会員登録後から数年経過した保育士さんに現在の求職状況をAI架電をお伺いする取り組みを進めたところ、再登録率や成約率向上につながっています。
保育士の方々のなかには「ちょうどお仕事を探していた」「働き方を変えたいと思っていたので気になる」といった方もいらっしゃいます。
非効率な定型業務はAIに任せ、人為的な工数削減と、面談につながる接点数の増加を両立させることができています。
当社では数年前からAI活用を全社的に推進しており、社員も日常的にAIを使っています。AIはあくまで指南役であり、最終的な判断は人が行うべきだと考えています。求職者との面談など、人とAIの役割分担を明確にすることが重要です。
導入以前は「頑張れ」と人力で乗り切っていた業務がシステムで代替できたことで、社員の離職率低下や定着にも貢献している可能性があると感じています。
LINEの1to1の「見える化」で対応品質を上げ、求職者に「すぐに繋がれる安心感」を提供
また、求職者とのコミュニケーションインフラとしてLINEを数年前から導入しています。若年層を中心に「電話離れ」が進む中、LINEが「一般的なコミュニケーションツールのインフラ」となったからです。求職者にとって慣れたツールを使うことで、企業側からの一方的な連絡ではなく、末永いお付き合いができる接点を構築しています。
LINE活用は、まず新規顧客の歩留まり改善に効果がでています。新規でWEBサイトのランディングページへ流入していただいた層に対し、まずはLINEの友だち追加を促し接点を持つことで、会員登録前の歩留まりが改善しています。
登録後は求職者の流入元やアンケートに基づいたセグメント配信で効果検証を行い、登録時のシナリオ配信やリッチメニューの設定をアップデートしています。
また求職者の1to1対応についても、LINEを活用しています。
システムを使用することで、電話や個人のLINEで行ってきたやりとりを可視化することができ、担当者間の引き継ぎもスムーズになり全体最適につながっています。担当者や対応フェーズが変わっても、コミュニケーションの履歴が一貫して把握できるようになり、属人性を排したスムーズな対応が可能です。
求職者にとって「すぐに繋がれる安心感」は、サービス満足度向上に直結します。システムと運用をオールインワンで支援してもらえることが、導入の決め手となりました。
電話不通時はLINEへ、チャネル連携で実現するスムーズな顧客体験
最も重要な成果は、このアプローチが単なるLINEとAI架電活用で終わっていない点です。現在は、チャネルを組み合わせてコミュニケーションを図っています。

AI架電時に不通だった求職者に対し、自動でSMSを送信し、LINE公式アカウントの登録をご案内しています。
このマルチチャネルコミュニケーションを実施した結果、前年度比較でLINE友だち登録の増加数が140%となりました。※
また、SMS送信時に「今後希望する連絡手段」のアンケートを取得したところ、回答者の98%が「LINEからの連絡」を希望する結果となりました。そのため、電話に出たくない、または出られない方とつながれている可能性が高いと考えます。
※2024年4-9月,2025年4-9月対比実績

そして、自社サービスに登録済みの方を対象としているため、自社データとLINEのデータを紐づけることもできています。
紐づけたデータを活用し、求職者の行動に合わせたアクションを試みました。
具体的には、LINE配信後にウェブサイトへ遷移した直後の求職者はモチベーションが高いと仮説を立て、遷移直後にAI架電を実施。異なるタイミングでの効果を測定した結果、即座に架電(クイックコール)した求職者の通電率は、3日後に架電した場合と比較して4倍以上に向上し、転送率は約2倍となりました。
さらに、LINE配信への反応がない求職者の方へ架電の通電率と比較すると8倍、転送率は約7倍の差がでています。
お客様が反応したリアルタイムデータを活用して、AIだからこそできるクイックなアクションをすることで、人では出せなかった効果を創出できています。
この結果から、電話がつながりにくい状況下であっても、求職者の意欲が高まっているタイミングを捉えることで、接点確保が可能だと考えられます。
さらに、電話で求職状況を確認し、アクティブな方にはLINEでフォローを行う取り組みも開始しました。
これまでは、LINE経由でウェブサイトに再訪した求職者に対しても、応募を待つのみでした。
しかし、AI架電とLINEの連携により、求職者の意欲が高まっているタイミングでアクションすることで、高い反応を得られたことから、求職者のタイミング、ニーズに合わせたコミュニケーションを実現し、人とAIで求職者をフォローすることで「取りこぼしが少なくなっている」という改善を実感しています。
業務効率化の先に「人だからこそできる支援」を目指す
私たちが今後目指すのは、システムのさらなるシームレスなチャネル連携です。今はまだ、CRMや外部媒体とのデータ連携には課題があると感じています。ここがうまくいくと業務をもっとスムーズにできると考えています。
その分の非効率な作業を削ぎ落とし、キャリアアドバイザーには求職者の深い悩みや課題解決といった「人対人」でしかできない対話に、全力を注いでほしいと考えているからです。
今後は、求職者のニーズに合わせたレコメンド機能へのAI活用や、在職中の求職者から特に要望の多い夜間・土日の面談設定に対し、AI架電やLINE連携による柔軟な自動予約・対応を可能にし、キャリアアドバイザーがより人と向き合える時間を作りながら、選ばれる事業へと成長させていきたいと考えています。